菊池 寛 「極楽」

有名な日本を代表する作家、菊池寛の「極楽」という小説の話を先日、知人から聞き、興味をそそられた。

夫に先立たれた婦人が、自分が死を迎える時には、極楽へ行ける。そして、亡くなった夫に極楽で再会できる。このことだけを楽しみに、また目標に、余生を精一杯生きた。そして、いよいよ、極楽で、亡き夫と再会できた。極楽は全てが平和で、安穏で、安らぎがあり、満たされており、不足するものは何もない。ただ、この状態が永遠に続く。極楽か地獄しか行先はないので、極楽へ来れたことを幸運に思う。

しかし、この平和で、安穏で、常に満たされた極楽の状態が永遠に続くとなると、それはそれで退屈で、生前の貧乏や、満たされない生活さえもが、懐かしく思われてくる。むしろ、可能であれば、生前のあの生活に戻ることができるなら戻りたいと。

人間の欲望は限りがなく、常に向上したいからこそ、発明や、発展があり、技術革新なり進歩がある。そして、今、自分の抱える困難さや、煩わしさ、から何とか逃げ出したい一心で、脱出を試み、ある意味で、極楽を目指している。

問題は、それがかなってしまった後の空虚さである。目標がない人生ほど空虚なものはない。毎日が予想通りに進む日々ほど、退屈なものはない。思い通りにいかないからこその人生。予定調和でないからこそ、おもしろいのが人生の醍醐味である。こういう風に思うことのできる小説「極楽」であると思い、早く、秋の夜長に読んでみたいと思いました。

スタッフ H


新大阪・東梅田で貸事務所をお探しの方はこちら